白夜行考 東野圭吾の白夜行

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白夜行考 東野圭吾の白夜行

白夜行は映画、TVドラマ、そして原作の順に見て、読んだ。原作の淡々とした事件の進み方が本当に素晴らしい。亮司と雪穂の関係は最後の最後に笹垣によって明らかにされる。
この原作の終わり方は、おそらくこの原作を先に読んだ人には衝撃に近いだろう。原作を先に読まなかったのは、残念である。
桐原亮司と唐沢雪穂の関係はほとんど描かれていない。しかしどこか二人には、相手の影があるのである。だが、どこまで亮司が雪穂のことを思っていたのか、逆に雪穂が、亮司のことをどれだけ思っていたのかは、描かれていない。ただ二人とも自分たちの罪が時効になるまで待って二人で幸せに暮らす未来像を描いていなかったは確かである。

TVドラマや映画で注目を集めた風と共に去りぬは、あまり頻回には出てこない。 ただ、風と共に去りぬの原作と似ている部分もあることを感じる。まず唐沢雪穂が好きだったのは、篠塚一成である。ところが、篠塚一成は、唐沢雪穂の友人の川島江利子が好きだった。これは、スカーレット・オハラが、アシュレーに恋するが、アシュレーは従姉妹のメラニーと結婚する。
唐沢雪穂は、その後高宮誠と愛のない結婚をする。これもスカーレットが、メラニーの当てつけにメラニーの兄チャールズと結婚することにも似ている。レット・バトラーは、スカーレットの躍動的な精神に恋をしている。このレット・バトラーは、桐原亮司と重ねているだろう。
ただ、亮司と雪穂は、幼い頃から風と共に去りぬを読んでいたし、雪穂の愛読書であったことから、雪穂は亮司にレッド・バトラーになることを望んだし、彼女が成功する為に他の人と結婚することも亮司に納得させたのだろう。
風と共に去りぬでは、レッド・バトラーとスカーレットは結婚するが、最後は悲しい別れで終わる。それでもスカーレットは孤独になりながら、絶望の中から未来に向けて一歩を踏み出して行く。この小説では、最後に亮司は死ぬのだが、雪穂は振り向かず前を進んで行くのである。まるで本当にスカーレットのように。

唐沢雪穂をもう少し分析すると僕にはアンビバレントという言葉が浮かんでくる。小児期に受けた傷と、その為に犯した罪は逃げようと思って逃げ切れず二人に迫ってくる。被害者のレッテルを貼られた桐原亮司よりも犯罪者の娘のレッテルを貼られた西本雪穂には、辛い日々が待っていた。僕はこの話のテーマは、西本雪穂が受けた児童虐待によって生じたアンビバレントであると思う。

唐沢雪穂とアンビバレント

アンビバレントとは、同じ物事に対して、相反する感情を同時に抱くこと。ambivalent。一人の人物について、好意と嫌悪を同時に持つことである。特にこの感情は、児童虐待、性的虐待をうけた児童に生まれる。正常な愛着形成が障害されてしう。
西本雪穂は、幼い頃からの虐待が続いていたであろう。逃げても逃げてその悪夢は追ってくる。雪穂は、母と二人だけの家庭に育ち母を愛していたし母しか頼る者がいなかった。しかしその母は、自分を男達に売った惨い母でもある。彼女は母を愛するとともに憎悪もしていた。
彼女はこのアンビバレントの感情を育ていたのである。だからこそ、彼女は亮司のためではなく、彼女自身の為に母を殺したのである。そして彼女は、世間への復讐を誓い、自分で力強く生き抜いて行くスカーレット・オハラに憧れるのである。しかし彼女にはその後の人生においても、人に対して特に愛するもの対してアンビバレントの感情が生まれてしまうのが宿命なのである。愛すれば愛するほど、いつか裏切られるのではないかという感情が芽生えるのである。そして裏切られたと言う感情を持ちたくない為に、先に裏切るのである。その感情は、親友の川島江利子にも向くし、そして亮司にも。亮司は、自分を犯した男の子供であるし、今の状況に陥れた張本人であると思うのである。亮司は、彼女の唯一の純粋な愛情の対象ではあったが、彼女の復讐の対象でもあったのだろう。これが、彼女の宿命なのである。本当に悲しい定めの物語である。
彼女の救いはなんだったのか、亮司を愛しながら、彼を徹底的に傷つける。それでも愛してくれる亮司が好きなのである。

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